Googleは「Google Pixel 7a」(以下、Pixel 7a)を2023年5月11日に発表、同日より販売開始しました。本製品はGoogleのスマートフォン「Pixel」シリーズの中で比較的安価な「Aシリーズ」に位置づけられます。
ミドルクラスのスマホながらも、SoC(プロセッサー)は同社最新・最上位の「Google Tensor G2」を採用。メインカメラに6400万画素のイメージセンサーを搭載するなど、従来機「Pixel 6a」より大幅なスペックアップが図られています。今回は「Pixel 7a」と「Pixel 6a」を比較し、使い勝手や品質がどのように進化しているのかチェックします。
どのスペックが進化したのか?
「Pixel 7a」のOSは最新の「Android 13」。SoCにはGoogle独自開発の「Google Tensor 2」を採用しています。メモリーは8GB、ストレージ容量は128GB(UFS 3.1)です。
ディスプレイは6.1インチのフルHD+有機EL(2400×1080、429ppi、20:9、最大90Hz、コントラスト比1,000,000:1、HDR対応、24ビットフルカラー、Corning Gorilla Glass 3)を搭載。輝度は公表されていません。
カメラは背面に6400万画素の広角カメラ、1300万画素の超広角、前面に1300万画素カメラを搭載。上位モデルの「Pixel 7」のメインカメラは5000万画素なので、「Pixel 7a」のほうが高画素です。
ネットワークは5G Sub-6、nanoSIM+eSIM、FeliCa、ワイヤレス通信はWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3、NFCに対応しています。
本体サイズは152(幅)×72.9(高さ)×9.0(奥行)mmで、重量は193.5g。防水・防塵性能はIP67。4385mAhのバッテリーを内蔵しており、通常モードで24時間、スーパーバッテリーセーバーモードで最大72時間動作するとのことです。
「Pixel 6a」から「Pixel 7a」への主な進化点をまとめると下記のとおり。「Pixel 7a」は「Pixel 7」に限りなく近いスペックで、ミドルレンジクラスに留まらないモデルに仕上げられており、コスパがさらに高まった印象です。
Pixel 7a
SoC:Google Tensor G2
メモリー:8GB
ディスプレイのリフレッシュレート:90Hz
広角カメラ:6400万画素
超広角カメラ:1300万画素
フロントカメラ:1300万画素
Qi認証ワイヤレス充電:対応
顔認証:対応
Pixel 6a
SoC:Google Tensor
メモリー:6GB
ディスプレイのリフレッシュレート:60Hz
広角カメラ:1220万画素
超広角カメラ:1200万画素
フロントカメラ:800万画素
Qi認証ワイヤレス充電:非対応
顔認証:非対応
ここからは2モデルを比較しながら違いをレビューしていきましょう。まずは、ディスプレイについてですが、基本的なスペックは共通しており、画質の違いは感じられません。同じ画像を表示させれば発色はほぼ揃っています。
いっぽう、「Pixel 7a」はリフレッシュレートが最大90Hzに向上しており、ホーム画面やブラウザーなどで素早く左右、上下にスワイプすると、「Pixel 6a」より滑らかに描画されていることを体感できます。ただしリフレッシュレートを高くするとバッテリー消費が増えるので、基本的には60Hzで運用することをおすすめします。
最新SoCの採用で処理性能は着実に向上
「Pixel 6a」は「Google Tensor」を搭載していましたが、「Pixel 7a」は最新かつ最上位のSoC「Google Tensor G2」を採用しています。
今回ベンチマークを実施したところ、スマホの総合的な性能を計測する「AnTuTu Benchmark」の総合スコアは743835でした。「Pixel 6a」の総合スコアは698754だったので、「Pixel 7a」はその約106%相当のスコアを記録しています。
また、AIの性能を計測する「AI Benchmark」で、「Pixel 7a」は「Pixel 6a」の約279%に相当する564.1という総合スコアを叩き出しています。「Pixel 7a」は最新SoCの採用により、着実に処理性能を向上させたと言えます。
ただし、下記ベンチマークを見ていただけるとわかるのですが、今回CPUの性能を計測する「Geekbench 6」において、「Pixel 7a」と「Pixel 6a」のスコアが逆転しています。複数回ベンチマークを実施しても同じ傾向なので、計測誤差とは言えません。「AnTuTu Benchmark」、「3DMark」、「AI Benchmark」では「Pixel 7a」のほうがスコアは上回りましたが、「Geekbench 6」では何らかの相性問題が発生している可能性があります。
処理性能を向上させつつも発熱はやや低減
「Pixel 7a」は処理性能が向上しましたが、本体の発熱量はどう変わったのでしょうか? 今回、「AnTuTu Benchmark」実行中の表面温度をサーモグラフィーカメラで計測してみました。結果は以下のとおりです。
Pixel 7a
前面 最大38.4度、最小30.0度、平均36.5度
背面 最大39.1度、最小28.4度、平均35.5度
Pixle 6a
前面 最大40.0度、最小30.0度、平均35.7度
背面 最大39.3度、最小27.8度、平均36.1度
最大温度で比較すると「Pixel 7a」のほうが低く、平均温度で比較すると前面は「Pixel 6a」、背面は「Pixel 7a」のほうが低い値が出ています。前面の平均温度のみ「Pixel 7a」のほうが高くなっていますが、それ以外では「Pixel 7a」のほうが低く抑えられています。「Pixel 7a」は処理性能を向上させつつ発熱量をやや低減していると言えるでしょう。
6400万画素イメージセンサーにより超解像ズームの画質が向上
前述のとおり、「Pixel 7a」で最も大きく進化したのがカメラです。特に、広角カメラは画素数で比較すると「Pixel 6a」の約5.25倍に向上しています。
ただし、「Pixel 7a」の広角カメラは、クアッドベイヤー配列のため6400万画素のまま記録するわけではなく、高画素の恩恵をストレートに受けられるわけではありません。実際、今回「Pixel 7a」と「Pixel 6a」で撮り比べてみましたが、画角は多少異なるものの両者に大きな違いは感じませんでした。夜景モードでは「Pixel 7a」のほうが暗部の描写力が高かったですが、並べて比較しなければわからないぐらいの差です。
広角カメラの高画素イメージセンサーが本領を発揮するのが超解像ズームです。「Pixel 7a」は最大8倍、「Pixel 6a」は最大7倍の超解像ズームが可能ですが、下記の写真をご覧いただければわかるとおり解像感は「Pixel 7a」のほうが圧倒的に上です。ビルの屋上の格子までしっかりと描写されています。Googleは超解像ズームを常用できるように6400万画素のイメージセンサーを採用したのでしょう。
高倍率ズームで撮影するなら「Pixel 7a」、超広角と広角メインなら「Pixel 6a」がおすすめ
「Pixel 6a」の販売はまだ続いており、Googleストアでは53,900円(税込。以下同)で購入可能。「Pixel 7a」が62,700円なので、両者の価格差は8,800円ということになります。
今回両機種を試用していちばん大きな差を感じたのは、やはり広角カメラ。超解像ズームの最大倍率ではイメージセンサーの画素数が決定的で、6400万画素の「Pixel 7a」では、超解像8倍ズームを十分に常用できると感じました。そのいっぽうで、処理速度については体感的にほとんど違いが感じられませんでした。
というわけで、高倍率ズームで撮影する機会が多いのであれば「Pixel 7a」がおすすめですが、超広角と広角のみで撮影するのであれば「Pixel 6a」から機種変更する必要性はあまり大きくないでしょう。
ただし。できるだけ長く使いたいのであれば、後発でセキュリティアップデートが長く提供される「Pixel 7a」をお選びください。